強制不妊手術の実態解明と被害者への謝罪・補償を求める要望書の賛同人になってください

 「優生手術に対する謝罪を求める会」と別紙の呼びかけ人が、厚生労働大臣宛に要望書を提出しようと考えています。
締め切りは2003年2月末日としましたが、反響が大きいので、3月末日まで延期することにしました。
多くの方にこの事実を知ってもらい、賛同人になっていただくために、さらなるご協力をお願いします。

 以下の要望書を厚労大臣に提出することに賛同して下さる方は、「強制不妊手術に関する要望書への賛同」と書いて、お名前、肩書きあるいは所属グループなどをお書き下さい(お名前だけでもかまいません)。
どうぞ周囲の方に広めてください。

国会議員の立場で賛同して下さる方も募集していきます。
寄せられた全ての方のお名前で、厚労大臣に提出する予定です。
どうぞ、ご協力ください。

これまでに学者、研究者、女性運動、障害者解放運動、親の会、医療関係者、宗教関係者、学生などなど、さまざまなジャンルの方が賛同してくれています。

「こういう事実があったことだけでも知ってもらえればと思います。人間に優劣なんて、絶対つけてはいけないんです」
「よかったら賛同メールを送ってください。自分を大切にできる女が、この運動を通して増えていく。そんな気がします」
などのメッセージが書かれています。

連絡先:
ファックス 03−3353−4474(SOSHIREN女のからだから)
Eメール   yunet@cat.zero.ad.jp   (優生思想を問うネットワーク)

  
  「強制不妊手術に関する要望書に賛同します」

お名前:

肩書きあるいは所属グループ:

ご連絡先:住所
     電話番号                Eメール


厚生労働大臣 坂口 力 様

旧優生保護法による強制不妊手術の実態解明と被害者に対する謝罪・補償について

 1948年制定の「優生保護法」は、1996年に「母体保護法」へと変更されました。その理由は、旧「優生保護法」の基底にあった優生思想、すなわち「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」(同法第1条)などが、障害者に対する差別となっていたことへの深い反省と、人権尊重への決意からでした。(*)
 しかしながら、以下のような事実が蔑(ないがし)ろにされている現実を考えると、わが国における「優生保護法」の撤廃は、いまだ法律文言上のものにすぎないと言わざるをえません。

 第一に、旧「優生保護法」は、その第4条および第12条によって、本人の自由意思にもとづかない不妊手術を約50年間にわたって合法化してきました。この条文にもとづく不妊手術(優生手術)に関して、旧厚生省が1953年に各都道府県知事あてに通達し、1996年まで効力を有したガイドライン「優生保護法の施行について」は、その「強制の方法」として「身体の拘束、麻酔薬施用又は欺罔(ぎもう)等の手段を用いることも許される場合があると解しても差し支えない」と指導してきたのです。この第4条と第12条にもとづいて実施された不妊手術は、公式統計にあらわれているものだけでも1949年以降、約16、500件にのぼっています。(**)
 第二に、近年のハンセン病国賠訴訟の過程でも明らかになったように、ハンセン病者の場合には、表向きは本人が同意しているように見えても、療養所内での不妊手術が強制されたという事実もあります。同じようなことは、第3条「本人・配偶者・血縁者が遺伝性の精神病や身体疾患を有する場合や、配偶者が精神病や知的障害を持つ場合、本人や配偶者の同意を得て優生手術を行うことができる」の「本人の同意」においても当てはまるケースがあると考えられます。
 第三に、障害をもつ女性が、「生理時の介助が面倒」等の理由によって、子宮あるいは卵巣の摘出や、卵巣への放射線照射をされるケースも数多くありました。旧「優生保護法」の、優生手術は「生殖腺を除去することなしに」なされなければならない(第2条)、また同法の規定に反して「故なく、生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射を行なってはならない」(第28条)という規定に照らすならば、これは、すでに「優生保護法」にさえ違反していると言わざるをえません。ところが、前述の同法第1条「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」という文言に見られる優生思想によって、間接的に正当化されてきたと言うことができます。
 真に「バリア・フリー」な社会において、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)は、障害をもつ人びとに対しても十全に保障されるべきものです。障害をもつ人も妊娠・出産・子育てができるための社会的支援をととのえ、障害のあるなしによって子どもを産むかどうかを差別されない社会環境をつくっていかなければなりません。そのためにも、優生保護法をめぐる過去の問題に対して、しかるべき対応をすることが必要です。
 以上に述べた事実は、わが国ではいまだにきちんと光が当てられず、被害者に対する謝罪や補償もなされていません。こうした過去の事実にきちんと向き合うことなしには、「優生保護法」はいまだに撤廃・改正されていないと言わざるをえません。
 したがって、私たちは日本政府、とりわけ厚生労働省に対して、早急に以下の行動を起こすよう強く要望します。

1.政府は、旧「優生保護法」が直接、間接に正当化する形で実施された、人権侵害の疑いのある不妊手術および子宮・卵巣摘出手術や卵巣への放射線照射について実態解明をおこなうこと。その際、被害者のプライバシーの尊重を徹底し、事実の検証という名のもとに、被害者に再度、苦痛や不利益がもたらされるようなことがあってはならない。

2.この実態解明をふまえて、政府は、これらの手術の被害者に対して、しかるべき謝罪と補償をおこなうこと。
3.その上で政府は、これらの人権侵害が二度と繰り返されないような対策を講じること。

 2001年、ハンセン病問題について、わが国では、「かつて合法であったから」という不遡及原則を超えて、「らい予防法」の非人道性に対する反省がなされました。これは、政府がとるべき責任の一端を果たしたものとして、評価できます。全く同じことは旧「優生保護法」に対しても、なされるべきことは明らかです。
 優生学的理由にもとづく強制的な不妊手術は、周知のように、ナチス・ドイツにおいて大規模に実施されました。日本の旧「優生保護法」も、ナチスの断種法を範とした「国民優生法」(1940年制定)の延長線上にあります。戦後ドイツでも、ナチスによる強制不妊手術の問題は長らく光があてられませんでしたが、1980年代になって、(旧西)ドイツでは、強制不妊手術の被害者に対する政府の公的な謝罪と補償がなされるようになりました。
 また、1997年に表面化したスウェーデンの強制的な不妊手術についても、スウェーデン政府は迅速に実態解明に着手し、さらに被害者に対する公的補償を1999年7月から開始しています。
 これらの海外の動向を見ても、日本政府は、旧「優生保護法」下の強制不妊手術の問題に対して、誠実な対応をすべきことは明らかです。
 さらに、国連の人権委員会は、1998年11月に以下のような勧告を、日本政府に対しておこなっているはずです(「規約第40条に基づき締約国から提出された報告の検討/人権委員会の最終見解/日本」)。
 31.委員会は、障害を持つ女性の強制不妊の廃止を認識する一方、法律が強制不妊の対象となった人達の補償を受ける権利を規定していないことを遺憾に思い、必要な法的措置がとられることを勧告する。

 日本政府は、国連人権委員会のこの勧告を誠実に受けとめ、しかるべき対応をおこなう義務を負っているはずです。
政府の誠意ある回答を心から期待いたします。

2002年12月



「優生手術に対する謝罪を求める会」
呼びかけ人:
石黒敬子((財)日本ダウン症協会)
市野川容孝(東京大学大学院教員/医療社会学専攻)
大橋由香子(SOSHIREN女のからだから/編集者・ライター)
熊木聖子(看護師)
佐々木和子(優生思想を問うネットワーク)
鈴木良子(フィンレージの会/編集者・ライター)
利光恵子(優生思想を問うネットワーク/薬剤師)
長瀬修(東京大学特任教員/障害学専攻)
中野冬美(優生思想を問うネットワーク事務局)
南雲君江(DPI女性障害者ネットワーク)
藤野 豊(富山国際大学教員/日本近現代史専攻)
堀口雅子(産婦人科医師)
本田真智子(DNA問題研究会/フリーライター)
松原洋子(立命館大学教員/科学史・科学論専攻)
丸本百合子(からだと性の法律をつくる女の会/産婦人科医師)
矢野恵子(優生思想を問うネットワーク)
山本勝美(「季刊福祉労働」編集委員)
山本有紀乃(からだと性の法律をつくる女の会/会社員)
米津知子(SOSHIREN女のからだから/会社員)
                    
*1996年6月18日参議院本会議において可決された「優生保護法の一部を改正する法律案」の「理由」には次のようにある。「現行の優生保護法の目的その他の規定のうち不良な子孫の出生を防止するという優生思想に基づく部分が障害者に対する差別となっていること等にかんがみ、所要の規定を整備する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」
**出典は『医制八十年史』および各年度『優生保護統計報告』