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私たちは、森喜朗氏に以下の発言の撤回と
女性への謝罪、議員辞職を求めます。


2003年7月8日

 去る6月26日、森喜朗氏は全国私立幼稚園連合会の討論会(鹿児島市)において次のような発言をしました。
「子どもを沢山つくった女性が、将来国がご苦労様でしたといって、面倒を見るのが本来の福祉です。ところが子どもを一人もつくらない女性が、好き勝手、と言っちゃなんだけど、自由を謳歌して、楽しんで、年とって・・・税金で面倒見なさいというのは、本当におかしいですよ。」

 この発言について、以下の理由から私たちは強く抗議します。


1.森氏の発言は、女性の役割を「子どもをつくる」ことに限定し、また「子どもをつくる」役割を女性だけに限定しています。

 氏は、女性の役割が「子どもをつくる」ことにしかないと考えているのでしょうか。子どもの有無にかかわらず、すべての女性はかけがえのない存在であり、社会においてそれぞれにさまざまな役割を果たしています。女性の役割を「子どもをつくる」ことに限定するかたちで成り立ってきた政府の制度や政策、雇用のシステム、さらに慣習や社会通念によって、女性に子育ての過剰な負担がかかっていること、それに付随して一人一人の女性が社会において十全にその能力を発揮できない状況であること、これこそがまさに少子化の最大の原因にほかなりません。森氏は自民党の少子化問題調査会会長ですが、いったい少子化について何をどのように"調査"されたのか、理解に苦しみます。
また、森氏はなぜ男性については言及しないのでしょうか。「子どもをつくる」ことが女性と男性双方の問題であるという認識を、欠いているとしか思えません。たとえば先月発表された男女共同参画7カ国比較調査でも、日本は性別役割分担意識が強く、家事は9割が妻の分担となっています。それゆえの女性の負担も、子どもをもちにくい原因であり、また男性が子育てから遠ざけられている原因といえるでしょう。これは両性の、そして取り巻く社会の問題として解決しなければなりません。

2.森氏の発言は、子どもをもたない女性をはなはだしく誤解し誹謗しています。

 氏は、子どもをもたない女性が「好き勝手、自由を謳歌して、楽しんでいる」と決めつけています。女性が子どもをもたない事情を、このようにしか理解できないのでしょうか。責任与党である自民党の少子化問題調査会会長が、この程度の認識であるとしたら、あまりにも残念なことです。
 子どもをもちたいと願いながらも、仕事と子育ての両立の困難から、経済的負担や住居の狭さから、あるいはシングルであるために、あるいは病気のため、不妊のため、または障害や出生、年齢、人種などにまつわるさまざまな偏見や差別の結果として子をもてない人がいます。これらは、個人の力を越えた国および政府と社会全体の問題ですが、森氏はこれを無視し個人の問題のみに帰そうとしています。それは政治家としてあまりに無責任な態度です。
 日本には、戦前・戦中に女性のからだが兵士を産む道具として国に利用された苦い歴史があります。「お国のため」に個人の人権が侵害されるという政治体制を反省して、戦後個人を大切にする民主的な社会の建設が模索されてきたはずですが、森氏は現在の日本にふさわしい歴史感覚をもっているとは到底思えません。世間の常識や、いまだに残る家制度に従属しない「個」として生きるため、子どもをもたない人生を選び、社会で働き生活している女性たちも少なからずいます。彼女たちは当然ながらこの国の構成員であり、社会のさまざまな場で活躍していますが、女は子どもを産まねば何の役にも立たないとする森氏の発言は、こうした個を生きている女性たちをもはなはだしく貶めるものであり、憤りを禁じえません。
子どもをもつかもたないかは個人の選択に委ねられるべき問題ですが、その選択は国や社会のさまざまな環境が整備されてはじめて可能であることを、忘れてはなりません。同時に、社会の中に、産まない選択をする人、不妊であるために子どもをもたない人を「好き勝手」などと誹謗する意識があっては絶対になりません。

3.森氏の発言は、福祉の概念を間違った方向にねじ曲げようとしています。

 氏は、「子どもを沢山つくった女性」を、「国がご苦労様でしたといって、面倒を見る」のが「本来の福祉」だと言っています。そして、「子どもを一人もつくらない女性を、税金で面倒見るのはおかしい」と言います。ここには、先に指摘した「女性の役割/国への貢献=子どもをつくることだけ」という間違った認識があり、子どもがいなくても、納税者の義務をまっとうしている女性の存在がまったく無視されています。問題はそれだけにとどまりません。森氏は福祉というものを、"国が上から与える施し"と見なし、さらに"国のために貢献しなかった者には、福祉=施しはない"と言っているのです。いうまでもなく、福祉とは施しではなく個人の権利であるべきです。森氏の考えによると、"国に貢献しなかった"と見なされる人々は、切り捨てられてもしかたがないということになります。氏の発言は、福祉の概念までも間違った方向にねじ曲げようとしています。

4.去る6月11日、衆議院で少子化社会対策基本法案が一部修正の後、付帯決議が付され可決されました。法案の審議は7月1日から参議院に移りました。森氏の発言は、まさに国のために子どもを産むことを奨励しようとするこの法案の本質を露呈しているように思えてなりません。

 わが国は、法的拘束力をもつ国連の女性差別撤廃条約を1985年に批准しています。同条約は子の数と出産の間隔を決定する権利を女性にも認めました。また、1994年にカイロで開かれた国連の国際人口開発会議の行動計画では、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康/権利)の重要性が提唱され、わが国はこれに同意しました。森氏の発言は、日本政府も支持しているこれら条約や行動計画の内容に反しています。一度は総理大臣を務め、今も国政において責任ある立場にいる森氏が、このような発言をすることはきわめて重大な問題であり、私たちはこれを許すことはできません。

森喜朗氏がただちに発言を撤回し、謝罪のうえ議員を辞職することを強く求めます。

以上

【呼びかけグループ】
SOSHIREN女(わたし)のからだから/からだと性の法律をつくる女の会/I(あい)女性会議/女のからだと医療を考える会/ふぇみん婦人民主クラブ/しんぐる巣/北京JAC/フィンレージの会/あんふぁんて・どんな保育が欲しい会(2003年7月8日現在)

連絡先 ふぇみん婦人民主クラブ tel 03-3402-3238 fax 03-3401-3453