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シンポジウム「資源としての卵子・受精卵・胎児−狙われる女のからだ−」主催グループ要望書



内閣総理大臣 小泉 純一郎 殿
厚生労働大臣 尾辻 秀久 殿
文部科学大臣 中山 成彬 殿
経済産業大臣 中川 昭一 殿
内閣府特命担当大臣 棚橋 泰文 殿
厚生科学審議会科学技術部会 ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会 中畑龍俊委員長殿、委員各位殿
科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会 特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会人クローン胚研究利用作業部会
吉村泰典班長殿 委員各位殿
厚生労働省健康局疾病対策課 御中
厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課 御中
文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室 御中
内閣府政策担当統括官(科学技術政策)付き ライフサイエンス担当 殿


 2004年に入り、ヒトの卵・胚・胎児を研究利用しようとする動きが激化しています。具体的には、総合科学技術会議生命倫理専門調査会がヒト胚やヒトクローン胚を用いた研究を承認、日本産科婦人科学会が着床前診断の臨床応用研究の実施を許可、「ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会」が中絶胎児の臨床研究応用を検討という動きです。
 私たちはこのような動きによって、女のからだが実験のために利用され、医療の産業化という趨勢のなかで資源化される、すなわち道具とみなされるのではないかという危機感から、2004年12月12日にシンポジウムを開催しました。
 このシンポジウムで明らかになったことは、不妊治療の卵採取や胚凍結に際して、当事者の女に対し十分な説明が行なわれておらず、婦人科治療で科学的証拠(エビデンス)もないまま、がんの予防という理由で卵巣摘出が勧められているという現状であり、中絶時の女の身体的、精神的、社会的に不安定な状況です。また、産婦人科領域では一般に、「女の患者と男の医師」、「患者−医者、女−男」という二重の意味で対等ではない関係がみられ、他の診療科以上にインフォームド・コンセントの確立が遅れてきました。

 女のからだは、歴史的に国家の人口政策や家制度によって妊娠・出産(生殖)の調節手段として扱われてきました。戦後になりそれらのそうした政策や制度こそなくなりましたが、現在も女は子どもを産むことをもって価値があるとする考えは根強く残っています。一般に卵巣や子宮は、女の健康という観点からではなく、子どもを産むための器官として大切にされてきました。また、性や生殖に関する情報が不足している中で、残念なことに女自身も自分のからだについて、十分な知識のないまま他者の決定に身を任せざるを得なかった現実もあります。卵を取るためには女のからだを傷つけざるを得ず、場合によっては死に至る可能性すらあります。当事者の女が自らの性と生殖に関し、十分な情報に基づき自由意思で決定することを尊重したリプロダクティブ・ライツの視点なしに、卵・胚・胎児研究を進めることは、女を再び生殖の道具に貶めることにつながります。
 このような現状の中で、卵・胚・胎児を利用した研究に着手することに私たちは重大な懸念を表明し、以下のことが実行されるまで、研究への着手を中止することを要望します。
  1. 卵採取、卵巣摘出、胚凍結、中絶等におけるインフォームド・コンセントの実態、および卵・胚・胎児を利用した研究の現状を調査すること。
  2. 上記の現場において女性が何を感じたかを調査すること。
  3. 現状を把握した上で、研究利用が、女性に対して、身体的、精神的負担を加えないか、研究利用のために新たな卵採取、卵巣の摘出、胚の作成、中絶が誘発されないかを検討すること。
  4. 調査・検討の場に、当事者である女性の声を反映すること。
  5. 性と生殖に対する女性と男性の意識にはあきらかな差があることがさまざまな意識調査において明確になっていることに鑑み、卵、胚、胎児などの扱いを検討する委員会のメンバーの少なくとも半数は女性にすること。
  6. 1994年国際人口開発会議で承認されたリプロダクティブ・ライツ、リプロダクティブ・ヘルスの視点に基づき、性と生殖に関する情報を国民に十分公開すること。

2004年12月12日
シンポジウム「資源としての卵子・受精卵・胎児−狙われる女のからだ−」主催者一同
−女のからだと医療を考える会
−からだと性の法律をつくる女の会
−SOSHIREN女(わたし)のからだから
−フィンレージの会
−ふぇみん