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国際セーフ・アボーション・デー連続記念トーク「中絶についてとことん話そう!」

SOSHIREN「日本の女の健康運動−わたしのからだはわたしのもの」
配信中に寄せられたコメントについてお返事します

9月28日は、世界中の女たちが安全な中絶を選ぶ権利を求めて一斉に行動を起こす日−国際セーフ・アボーション・デーでした。日本では27日にYoutubeでオンラインイベント「中絶についてとことん話そう!」が開催され(呼びかけ:国際セーフ・アボーション・デー2020 Japan)、6時間にわたってさまざまな分野、視点から中絶の問題が語られました。

SOSHIREN(ソシレン)も「日本の女の健康運動−わたしのからだはわたしのもの」と題して、これまでの活動を紹介したのですが、当日は視聴された方から寄せられたコメント(チャット)に触れることができませんでした。そこでソシレンに寄せられたコメントに対するお返事を、ホームページに掲載することにしました(読んでくださるとよいのですが…)。


【SOSHIRENは少なくとも2009年頃まで子殺しという表現を使っていたのがひっかかる】というコメントについて。
この表現が、中絶の罪悪視を助長するとのご懸念かと思われます。
該当する時期のソシレンニュース(*)をみましたところ、2008年9月23日開催の連続講座のタイトルとして「子殺しと子育てのあいだで−−70年代リブ、優生保護法、そして現在(いま)」という記載がありました。

ソシレンは中絶を「子殺し」と表現したことはなく、これも中絶を示すものではありません。
この講座はソシレンのメンバー共著の『記憶のキャッチボール:子育て・介助・仕事をめぐって』と、70年代リブ運動の資料を復刻した『リブ新宿センター資料集成』(ともにインパクト出版会)の出版記念を兼ねる企画でした。子育ての困難(児童虐待)との関連で「子殺し」という言葉を使っています。中絶になぞらえる意味はないことを、ご理解ください。

ちなみに「子殺し」に関して補足します。
1960年代中頃〜1970年代の初めにかけて、母親が子どもを殺す事件が多数報道され、「母性喪失」といった女への非難の言葉が投げかけられました。70年から活動を始めたウーマンリブ運動は、それは、子育てに社会的な支援が乏しい中で、産み育てる責任を重く背負う女たちが追いつめられている状況だと考えました。被告となった女性との文通、裁判の傍聴などに取り組み、1973年にはリブ新宿センターがパンフレット「子殺し 資料集」を出しました。

1970年代の初めといえば、中絶の禁止を含む「優生保護法」改悪案が出された時期でもあります。そうまでして子どもを産ませようとしながら、産んで育てる女性への支援はない。そんな酷い状況は、30数年たって変わったのかどうか、もう1冊の本『記憶のキャッチボール:子育て・介助・仕事をめぐって』の内容とともに、障害をもつ女性とも語り合おうという趣旨の講座でした。

(*)「ソシレンニュース女のからだから」No.269 (2008.8.28発行) 
No.271( 2008.11.20発行)  No.273( 2009.01.29発行)  No.274( 2009.02.26発行)。 
「子殺し 資料集」は「リブ新宿センター資料集成 パンフレット篇」に収録。
「ソシレンニュース」も「資料集成」も、国会図書館でも読めます。
また、「ソシレンニュース」の在庫のあるバックナンバーは販売しております。送料を含めた値段は、希望する号数とともにお問い合わせください。

【女性自身の意志による選択的中絶は制限すべきでないのでは?】、【当時の優生保護的な意味での胎児条項導入反対は心理的に分からなくはないが、非常に微妙な感じは、やはりある】というコメントについて。
胎児条項の導入反対は、中絶の選択肢を増やすことへの反対にならないか? というご指摘と受け取って、書かせて頂きます。
ご承知のように、優生保護法の第14条には、堕胎罪の適用を除外して人工妊娠中絶を医師に許可する条件が書かれていました。1972年の改悪案は、その第4号から「経済的理由」を削除すること(事実上の中絶禁止)と、胎児の障害を中絶を認める条件とする「胎児条項」を導入するというものでした。
残っている資料によれば、この案を知った当時の女性の運動は「胎児条項」を中絶の選択肢が用意されたとは考えず、むしろ女性を障害者排除の道具に使うもの、女性の人権をも損うものととらえて、女性の問題として反対していました。国が許可条件を増やすことと、女性が主体的に選択することは全く別の問題だと思います。
優生保護法条文→

現在でも、「胎児条項」の導入があるとすれば、障害をもつ人の出生の防止を法律が認めることになり、優生保護法の時代に戻るおそれがあります。とともに、中絶を処罰する堕胎罪のもとで、条件付きで、配偶者の同意を得て中絶が許されること自体を不当と考えるので、「胎児条項」導入が女性の権利の保障になるとはやはり思えません。
また、法律が中絶に条件をつけて許すことに反対の立場から、選別的中絶(出生前診断の後の中絶)を法律で禁止することにも反対します。

堕胎罪を廃止したうえで、中絶は、条件をつけずに女性の意志のみにもとづいて行うことができる状況が、女性の性と生殖の健康/権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)を成立させると考えます。
そして中絶の決定が、真に女性の意志にもとづいてなされるためには、女性に抑圧となる差別や偏見が取り除かれることが必要と考えていることを、27日にもお話しました。次の3点です。
  • 障害について偏りのない充分な情報が提供され、心おきなく相談できる場があること。
  • 障害があってもなくても、生まれて育つための社会的支援があり、多様な生き方が可能な社会であること。
  • 子どもを産んだか産まなかったか、生まれた子の性別や健康で女性が価値づけられない社会であること。
国際セーフ・アボーション・デーの皆さんのお話で、中絶にはたくさんの側面があり、多様な問題と結びついているということが鮮明になったと思います。コメントを頂いて、あらためて考える機会をもつことができました。コメントをくださった皆さん、ありがとうございました。これからも、ご一緒に深めていくことができれば嬉しいです。