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優生保護法とは


72年の「優生保護法」改悪とは

■1972年の優生保護法改悪案

改悪は3点ありました。人工妊娠中絶の要件について2つと、優生保護相談所の業務 について1つです。
  1. 人工妊娠中絶の要件から「経済的理由」を削除する−−中絶の件数を減らす
    改訂の箇所:人工妊娠中絶の要件が書いてある第3章 母性保護 14条4項
    「妊娠の継続または分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」を次のように変える。
    「妊娠の継続または分娩が母体の精神又は身体の健康を著しく害するおそれのあるも の」

  2. 障害をもつ胎児を排除する「胎児条項」を導入する−−優生学的目的をさらに強化
    改訂の箇所:第3章 母性保護14条
    人工妊娠中絶の要件として、「その胎児が重度の精神又は身体の障害の原因となる疾病又は欠陥を有しているおそれが著しいと認められるもの」を加える。

  3. 優生保護相談所が初回分娩の時期を指導−−問題が多いとされる高年齢初産を避ける
    改訂の箇所:第5章 優生保護相談所 第20条
    優生保護相談所の業務(優生保護の見地から結婚の相談・遺伝その他の知識の普及、受胎調節の普及指導)に、「適正な年齢において初回分娩が行われるようにするための助言及び指導その他妊娠及び分娩に関する助言及び指導」を加える

■1972年改悪案上程までの流れ

 1959年頃から、中絶規制を求める宗教団体の動きが活発化しました。61年には優生保護法改正請願書が厚生大臣に提出されました。優生保護法改廃期成同盟(67年)、優生保護法議員懇談会(68年)も発足して、中絶の規制を求めました。
 一方、優生政策を強める動きも続いていました。1963年、欧米と日本でサリドマイド禍発生。その後、WHOが予防医学の観点から先天異常に着目、専門家会議を開くようになり、日本でも関心が高まったのです。1970年に日本医師会が「優生保護対策委員会」を設置、先天異常の発生予防を提案しました。同じ年、政府は「心身障害者対策基本法」を成立させるなど、障害者福祉を進める方針を打ち出していましたが、そのことから逆に「福祉にかかるコストを削減するため、障害の発生を予防すべき」という声があるようになったのです。71年の「厚生白書」に“遺伝による先天異常を防ごう” という一節が設けられたり、厚生省が「心身障害研究事業」を発足させるという動きもありのした。
 1970年4月〜71年5月にかけて、衆議院社会労働委員会で「優生保護法の一部改正」請願がたびたび議題になりました。
 これらの動きがまとまって形になったのが、1972年〜74年の優生保護法改悪 案です。

■1972年〜74年の優生保護法改悪

*1972年
5月26日 第68回国会に 政府提案で「優生保護法の一部改正案」が上程された。提案理由説明がされただけで審議はなく、第70回臨時国会で審議未了・廃案となった。

*1973年
5月11日 内閣が同じ案の再上程を決定 同日夕方、第71回特別国会に上程された。
7月 6日 衆議院の社会労働委員会で提案理由説明
9月24日 改悪案を、次の国会でも継続審議することが決定

*1974年
5月16日 第72回国会 衆議院の社会労働委員会で改悪案の審議に入る。「胎児条項」を削除して、衆議院で採択された。その後参議院では審議未了・廃案となった。





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