一緒に考えてください! 「障害者差別禁止法 要綱案」その4 「障害者差別禁止法」第三次案にほっとしました
障害者政策研「障害者差別禁止法」作業チームによる、「障害者差別禁止法 要綱案」【第三次案】が、昨年暮れに発表された。 女の立場から大変気にかけていた第二章「九 出生」の項目は、【第三次案】では削除され、その趣旨は「前文」と、「八 医療およびリハビリテーション」に加筆された。選別的中絶への批判を表明しつつ、【第一次案】【第二次案】にあった「選択的中絶をしてはならない」といった"禁止"を意味する文言はない。私たちが伝えてきた意見が理解されたことに、ホッとするうれしさを感じている。 「障害者差別禁止法 要綱案」については、このニュースで何度が伝えしてきたが(*1)、あらためて経過を振り返ってみたい。
ソシレンは、女が人口政策・優生政策の道具とされることに反対だ。だから、障害児を生まれさせない目的をもつ出生前診断の技術開発や、選別的中絶を母体保護法の中で合法化する「胎児条項」の導入に反対してきた。障害をもつ子は、どうやってもゼロになるはずはなく、ある割合で必ず生まれてくる。もしも、障害の有る無しで受精卵や胎児を選別することが"誰もが行うこと"になってしまったら、それが待ち望んだ妊娠であっても、検査が済むまでは喜ぶことができなくなるだろう。子どもをもとうとする女性、カップルはとても不安になるはずだ。子どもをもつ・もたないを自分(たち)で決められること、どんな妊娠・出産も歓迎され支援されることが、女性のリプロダクティブ・ライツ(性と生殖の権利)には不可欠だ。だから、検査と選別的中絶を迫る圧力の高まりは、リプロダクティブ・ライツを侵害するものだ。女の立場から感じているこうした脅威は、作業チームとも共有できると思う。しかしソシレンは同時に、どんな場合の中絶でも、法による規制や処罰の対象とすることに反対している。 障害者への差別と女性への差別は結びついているから、一緒にそれをはね除けたいし、「障害者差別禁止法」もその一つの力となるだろうと思う。しかし堕胎罪がある現在、「障害を理由とした中絶をしてはならない」といった"禁止"意味する言葉が法律に盛り込まれることは不安だ。このことについて女の意見を聞いて欲しいと、2001年に作業チームに働きかけを始め、2002年7月にはソシレンからの意見と質問を送り、翌03年の9月28日、作業チームによるソシレンへのヒアリングが実現した。そこで、ソシレンの考えを「対案」の形で出すことになり、10月11日、ソシレンの「対案」を作業チームに送った。(→216号) 2003年12月、作業チームは要綱案の【第二次案】を発表した。(→218号) 「九 出生」の「補足説明」には、『(選択的中絶の禁止を)罰則をつけて強制することが妥当であるという考え方にもたちません』などの加筆があり、ソシレンの意見が反映されたことを感じた。しかし残念ながら、本文には「選択的中絶をしてはならない」の文言が残った。 法案は発案者の手を離れて国会にゆだねられ、そこには中絶規制を強化したい勢力が常にいる。作業チームには女性を処罰する意図がなくても、本文に禁止を意味する文言があればどのようにも解釈され得るのが心配だ。女性を処罰する意図がないなら、本文にもそのことを反映して欲しいと思った。 年が明けて04年1月25日、この問題についてソシレンだけでなく、「からだと性の法律をつくる女の会」、「DPI女性障害者ネットワーク」の古くからのメンバーにも呼びかけて、集まりをもった。そこでは、次のようなことを話した。
そして04年12月の【第三次案】は、「女性障害者」の項目はないものの、「出生」の項目については、作業チームが「対案」の意図を汲み取ってくれたと思う。そのことを作業チーム宛に、次頁のような手紙で書き送った。 これまでの対話は、どちらにとっても険しいものだったと思う。とくに二度の話し合いの場では、空気も硬くはりつめていた。が、そこから立ち去ることなく意見を聞き合うねばり強さが双方にあったこと、障害をもつ女たちがこの対話に加わってくれたことで、ここにたどり着けたとではないかと思っている。 *−* 作業チーム宛の手紙 *−*−*−*−*−*−*−*−**−*−*−*−* 障害者差別禁止法 作業チームの皆様2005年2月11日
「障害者差別禁止法要綱案」の「出生」項目について考えてきた一同より 「障害者差別禁止法要綱案 第3次案」拝見しました。私たちもなかなか集まる時間が無く、すぐにお返事ができなくて失礼しました。 2月12日に会議があると聞き、取り急ぎ私たちの意見をお送りします。
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